『缶ジュースの逆襲 part.2』     作/簑田詢平

 

Aは雑誌を読みながら自分の部屋でくつろいでいる。
何気なくテーブルの上の缶ジュースに手をかけた瞬間、指先に焼け付くような熱さを感じ、慌て驚くA。
いくら猛暑とはいってもさっきまで冷たかった缶ジュースがいきなり煮えたぎるわけがない。
不思議に思いおそるおそる缶ジュースに手を伸ばす。すると突然
 
缶ジュース/
俺に触るな!
 
缶ジュースのあたりからその声は聞こえる。事態を呑み込めず、驚きと恐怖で愕然とするA。
声の原因を探るべく、缶ジュースのあたり、そして部屋中を緊張しながら見渡す。
すると再び缶ジュースの方から
 
缶ジュース/
どこ見てんだよ!
 
ギョッとして振り返るA。
 
缶ジュース/
俺だよバーカ!(カタカタと動く)
 
明らかに缶ジュースが喋り、動いていた。
 
悲鳴を上げて部屋から逃げようとするA。
しかし、なぜか扉が開かない。パニックの中、缶ジュースを見ると動きは止んでいる。
何事もなかったかのような部屋。もう一度扉を開けることを試みるがやはり開かない。
部屋の奥に携帯が見える。友達に助けを求めることを思いつき、携帯を取りに部屋に戻る。
缶ジュースの近くを緊張しながら通りすぎ、携帯を手にする。
 
A/
あ、もしもし、俺だけど。あのさ、今困っててさ……部屋に閉じこめられちゃったみたいでさ…。
いや、たぶん鍵が壊れてるのかな……。うん……でさ…悪いんだけど…来てくれないかなって
思ってさ……。あ、忙しいの…?あ、そう……。…俺…どうしたらいいかな…あはは…。大家
さん?…ああ、まあね……。……いや実はさ……変なことがあってね。いや、今なんだけど。
……嘘みたいだけど…その…缶ジュースがさ…喋るんだよ…え?…いやほんとに…いやいや、
普通の缶ジュース…。そんで、さっきは動いたし。
いやいや、激しく動いたの…。え?……えーと(缶ジュースをのぞき込み)PONPONオレンジ…。
いや、ほんとふつうのジュース。え?…あ、今は喋ってない。動いてもない。俺?…いや、疲れ
とかじゃなくてさ。………いや、ほんとなんだよ!…いや、落ち着いてるよ…!……ああ…落ち
着くよ…。扉もほんとに開かないの…!
 
電話の相手はもう一度扉を開けることを試せと勧める。
 
A/
……え…ああ…いいけど…(玄関に行き扉を開く。何事もなく扉は開いた)…あ…開いた………
あ、いや…今開いた……うん……え……ジュース?…いや、まだそこにある。
 
電話の相手は缶ジュースも触って確かめるように勧める。
 
A/
え?いやだよ!いや、さっき熱かったの。いや、火傷するくらい熱かったの。
…え、今は熱いかどうかは知らないけど……………ああ……うん…わかったよ……(缶ジュースの
そばに行きおそるおそる触ってみる)…あ…熱くない…熱くない…あ、普通だ…え?…飲むの?
いや、それは……そお?…飲んだ方がいいかな………解った……飲む…(おそるおそる一口飲んで
みる)…飲んだ…飲めた……え?…おいしい……はは…。ああ……俺…疲れてたのかな……
ああ…落ち着いた…ごめんね……ああ、また今度…。
 
Aは電話を切る。缶ジュースを見つめるA。やがていつもと変わらない部屋を見渡し、一息つく。
缶ジュースをちょっと触ってみる。熱くない。ゴミ箱に捨てようと缶ジュースに手を伸ばす。
すると突然
 
缶ジュース/
触るなっていってんだろが!!!
 
Aの悲鳴と共に…幕